みなさま、おまたせしました。「月下狂瀾夜想曲」(げっかきょうらんやそうきょく)をお届けします。
前回「光の乙女」で予告しました通り、ドラディオン・ガロスを主人公としたお話となります。
「光の乙女」を読まれたあとに読めばよりいっそう楽しめるようになっていますが、もちろんこのお話だけ読んでも、またはどちらを先に読んでも大丈夫なようには作ってあります。もし「光の乙女」を読んだことのない方で読んでみてやろうかなとお思いの方は作者までご一報を。
さて、(がらりと口調を変えまして)知ってる人もいると思うけれど、これは第十一回富士見ファンタジア大賞に応募したものですが、いまだに何も通知がないということは、またしても落選してしまったんだろうね。とりあえず、ドラゴンマガジンの紙上ではまだ発表にはなっていないみたいだけれど……。
今回、本にするにあたって読み返してみて、以前の「光の乙女」の時ほどグチャグチャというわけではないけれど、ところどころ「あーあ」っていう箇所がありました。
私の尊敬する中島梓(栗本薫)さんの「小説道場」や、久美沙織さんの「新人賞の獲り方おしえます」、それにW大学の三田誠広さんの「文学科創作教室」などを読んで、少々の勉強をしたんだけれど、この方々が一様に口をそろえておっしゃっておられるのが「視点」というものでした。「視点をふらつかせない」これが大切な事なんだって。
語られている物語をどういう角度から、どんな構図から見て話を進めていくか……ということなんです。
「神の視点」という言い方があります。つまり作者の視点というものですね。
作者は書かれているキャラクターとか状況、すべてを熟知しているわけです。
ある場面で主人公がなぜこんなことをした、あんなことを言ったということを知っているわけです。それを紙面で説明できるわけです。詳しくね。 でもそれをしてしまっては、それは小説ではなくなってしまう。
そして、今までの私の小説はけっこう「神の視点」を振りかざすような書き方をしてきたということに気がつきました。
つまり、登場人物たちの心を細かく説明しちゃうんですね。
今回のこのお話もみなさん気づかれたと思いますが、そういうところが随所にみられたことでしょう。今ならこのお話、全面的に書き直すこともできます。より小説らしい小説が書けると自負しております。
だけど、私は次に書く新しい小説に力を使いたいと思うので、今回はそのまま本にすることにしました。(それでも少しは直したところもありますが)
それから、たいしたことではないかもしれないけれど、ファンタジー小説でよく出てくる語彙(ごい)に「召喚」という言葉があります。人間などが魔族などを呼び出すときに使うんですが、ほとんどの作家の人がこの言葉を使っています。私も今回はこの字で統一しました。
実は広辞苑で調べたところ「召喚」は「裁判所が被告人、証人などに指定された日、場所に出頭を命じること」となっていたのです。なんだかファンタジーの世界で使われている言葉とはニュアンスが違うようで、私はとても気になっているんです。
似たような言葉に「招喚」というのがあるんですがこれは「招き呼ぶこと」となっています。今回のお話の次に書いた続きのお話「大地の神器」ではこの「招喚」を使うことにしました。
でも今思いつきましたが、「出頭を命ずる」というこの言葉がもしかしたらピッタリなのかもしれませんね。呪文で無理やり呼び出して自分の配下とするわけだから、やはり「召喚」がふさわしいのかもしれません。
こんな風にして「言葉」というものは難しいです。何気なく使っていた言葉が、実は全然ふさわしくないときに使われているということが多々あるからです。
最近、ちょっとの文章を書く時もすぐに辞書をひいて合っているかどうかを見てしまうクセがつきました。
同時に人の書いたものや、テレビなどで誰かが言った言葉などが気になってしかたありません。これがけっこうみんな間違った使い方しているもんなんですよねー。
でもこれってある意味不幸かもしれないですよ。純粋に楽しめないんだもの。
でもね、そんななかでもいっぱい間違ったやり方してるのに、それを気にさせないほど夢中にさせてくれる話っていうのもやっぱりあるんです。 で、そういったものってどんな人でも面白いって思うもんなんですよ。つまり、私もそういうものを生み出せば、万人に受け入れてもらえるってことですよね。
今年も様々な新人賞などに投稿しましたが、ことごとく歯牙にもかけてもらえず、予選さえも通過しない状態でした。一時はほんとにどん底まで落ち込み、浮上できないのではないかと思うほどになりました。
でもやっぱり物語は書きたいし、自分を生み出してくれとキャラクターたちが私の頭の中でひしめき合っています。
最近ではファンタジーやSFだけでなく、「鳥取文芸」に載せていただいた私小説めいた小説も書きたいと思うようになりました。「いじめ」「自殺」「殺人」「虐待」とかいう世間を騒がせている事柄をテーマにしたものなどです。といっても、私の書く物はどうしても幻想っぽい感じに傾倒していきがちですが……。
さきほど名前を上げた三田誠広さんも本の中でおっしゃっていましたが、小説をたくさん読むこともいいけれど、よい本はたくさんあるので全部読もうと思ったらそれだけで時は過ぎてしまい、小説などいつまでたっても書けない。だから、せめて一人でもいいからよい作家の小説だけを全部読んで自分の物にするくらいはしたほうがいいって。
だからというわけではないけれど私もそうすることにしました。ここはやはり心の師匠である栗本薫(中島梓)さんしかいませんよねえ。
栗本名義の本は比較的手に入れやすいけれど、中島名義はおそらく全部は手に入らないでしょう。でも、手に入れられる限り手に入れて読むつもりでいます。
もちろん、他の作家の方をぜんぜん読まないというわけではありません。だけども、他の方のは買ってもなかなか読む気になれませんが、こと栗本さんの本はどんなに締切りが押し迫っていても、読まずにはいられないんです。まるで麻薬のような存在ですね。(たとえが悪かったかも…)
いろんな人の書いた小説を読んできて、ようやく到達できた私にとっての本物の作家がこの栗本薫という人なんです。
私は、自分がこんなに一人の人間に執着できるとはいまだに信じられません。恋愛感情ぬきでですよ。これは私にとって幸運としかいいようがない出来事だと思っています。
そして、いつか私も誰かの「栗本薫」になれるように、これからも物語を書きつづけていきたいと思っています。
それではまたいつか、別の本の「あとがき」でお逢いしましょう。
一九九九年九月一五日
(台風十六号が過ぎ去ったなかで)
まず、『月下狂瀾夜想曲』のページを彩ってくださった「クールムーン」のみんさんに多大なる感謝の気持ちを捧げます。どうもありがとうございました。m(__)m
さあ、ようやくHPにアップすることができました。天慈的にはとても気に入っている物語です。
これを書いてた時は、本当におもしろいほどワープロのキーが進んでいました。すべてのキャラが勝手に動いてくれ、すべてのエピソードがそれこそ天から降ってくるように次から次へと思い浮かんできて、とっても楽しく書いていたのを覚えています。
今回も前回の『光の乙女』同様、書き加えられた個所がほんのちょっとだけあります。
もともと原案の時点では存在していた個所ですが、投稿するさいにどうしても削らなくてはマズイということで、泣く泣く削った個所であります。いわゆる伏線というやつですな。(^_^;)
まあ、私の作った本を読んでない方には何の意味もないことなので、あえてどこの個所であるかは言いませんが。
今回のお話は、今まで私が書いてきたものより、ちょいと異色な感じがしていましたでしょ?(^。^)
そう、かーなーりー残酷めいた表現が随所に見られたことと思います。ファンタジー好きの方ならば、これっくらいはOKだと思い、あえて好き勝手に書いてみました。
それから、ヤフーの掲示板でも以前にカキコしたことがありますが、ドドスとテティのお話はMY LITTLE LOVERの「Hello,Again〜昔からある場所」の歌詞のイメージで妄想を膨らませていって書いたエピソードです。「記憶の中でずっと二人は生きていける」……それが表現したいがために書いたエピソード。
本来ならば、ドドスはただのおバカなままで、ドーラなりしもらーなりにタタッ切られて死んでしまう未来しかありませんでした。だのに、なぜかいまだ生き続けています。これから彼がどんな風に話に関わっていくか、実は作者の私でさえよくわかっていません。
もともと栗本さんのアリストートスのおバカ版として生み出されたキャラでしたけれど…。
それから主人公のドーラですが…。
これもいろんなとこでカキコしたと思いますが、モデルはTOKIOの松岡昌弘クンです。もし、このお話が映画とかになるのだったら(そんなこたぁないとは思いますけれど^^;)絶対彼にドーラの役をしてもらいたいなあって思ってます。
とまあ、そんな感じで、これ以後『大地の神器』へと続きます。
月の御子の次は大地の御子の登場です。今度は一変して「お笑い系ファンタジー」となります。(笑)
でも、その前に『光の乙女』でも書いた感じの外伝をひとつアップするつもりです。月下〜の外伝となりますね。
といったところで、また次のあとがきでお会いしましょう。(^^)
2000年7月20日今日から夏休みという日に
最後に、左のイラストを提供してくださった
「石榴の樹海」
の
いつきさま
に感謝の気持ちを捧げます。これはいつきさまのオリジナルキャラの少年だったのですが、私のマチアスくんのイメージにピッタリだったので、ご無理を承知の上でいただいたものです。快く申し出を受け入れてくださって大変嬉しく思っています。本当にありがとうございました!(2000/11/21記)